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古臭いアパートの一室に駆け込み、玄関に鍵をかけて、さらに上からチェーンロックもかける。キャメルのブレザーを玄関のハンガーポールにかけて、振り向きざまにユニットバスルームに入る。
小綺麗な洗面台の前に立ち、前傾ぎみに鏡を見る。鏡に映った自分の顔と目が合う。疑りぶかい老医者のような目が、無断外出を繰り返す精神病患者を監視しているように見える。
その鋭い視線から背けるように顔を伏せ、蛇口のハンドルを回し、まるで事故で流出した危険物質が大量に付着したような焦燥に駆られながら手を洗う。一度洗う。二度洗う。三度洗う。両手をじっと見て、また洗う。数回それを繰り返してやっと、もう何もついていない……いや、本当は元から何もついてなどいない。
私の手には、目には見えない象形文字や幾何学模様のような強迫観念が、びっしりとこびり付いているだけなのだ。




