表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁域  作者: 禅海
第一章
70/204

70

 やった! やっと忌々しい奴が居なくなった! ありがとうございます。ありがとうございます。あれを何もかも焼き尽くしてくれたのは、きっとあなたなのですね。ああ我が女神よ。感謝します。それからどうか私をお許し下さい。その美貌で自己を慰め、その御力を過信する私をお許しください。私はあなたになら、ゆくゆくは私の全てを差し出しても構わない。この肉体も、この魂すらも――。

 私はすっかり満足し、そしてかの女神の忠実な(しもべ)になることをここに誓った。もしかすれば、福音の暗誦(あんしょう)などよりも、実に呪詛の成就ほど、人に神を信じさせるものはないのかもしれない。


 焼け落ちてゆく誇りの瓦礫から這い出すように、無数の夥しい足跡が、降り積もる雪上を散り散りに逃げまどっているのを見た夜、茫然と立ち尽くすだけの祖父の隣で、私はただならぬ歓喜ではち切れそうな笑みを浮かべた。

 私は思い切り手首の数珠を掴んで、これでもかというくらいの力で引っ張った。ぶちんと中糸が音を立てて弾けた。数珠玉が狂ったように地面を飛び跳ね、辺りの草木の暗翳(あんえい)へ、蜘蛛の子を散らすように逃げ転がっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ