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やった! やっと忌々しい奴が居なくなった! ありがとうございます。ありがとうございます。あれを何もかも焼き尽くしてくれたのは、きっとあなたなのですね。ああ我が女神よ。感謝します。それからどうか私をお許し下さい。その美貌で自己を慰め、その御力を過信する私をお許しください。私はあなたになら、ゆくゆくは私の全てを差し出しても構わない。この肉体も、この魂すらも――。
私はすっかり満足し、そしてかの女神の忠実な僕になることをここに誓った。もしかすれば、福音の暗誦などよりも、実に呪詛の成就ほど、人に神を信じさせるものはないのかもしれない。
焼け落ちてゆく誇りの瓦礫から這い出すように、無数の夥しい足跡が、降り積もる雪上を散り散りに逃げまどっているのを見た夜、茫然と立ち尽くすだけの祖父の隣で、私はただならぬ歓喜ではち切れそうな笑みを浮かべた。
私は思い切り手首の数珠を掴んで、これでもかというくらいの力で引っ張った。ぶちんと中糸が音を立てて弾けた。数珠玉が狂ったように地面を飛び跳ね、辺りの草木の暗翳へ、蜘蛛の子を散らすように逃げ転がっていった。