表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁域  作者: 禅海
第一章
63/204

63

 干からびた老尋問管官の眼球が、傾いた小さなルームミラー越しに、私をじっと覗き込んでいる。

 この生涯野獣の狩猟に身を置いてきた、まもなく死を迎えてもおかしくないほど黄色く血走った斜視からは、いつも野性的な汚らわしい匂いが漂った。祖父の家の人知れない倉庫の(はり)に吊るされた、皮を剥がれ内臓を除かれ血の抜かれた鹿や猪の鮮やかな身肉を、じっと黙って見物しているときだって、そして口にしているときだって、私がその悪臭から逃げることができない身のすくむ思いをしたのはなぜだったか?


 私は段々と熱病に侵されて霞んだ目が覚めてくる気がした。

 まだ残り熱の燻る瞼を擦り、それから風呂黴(ふろかび)のように生臭い加齢臭の染みついた助手席から半身を離すと、雪水の湿気で曇った窓硝子を指で脱ぐい、夜更けてきた空を眺めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ