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干からびた老尋問管官の眼球が、傾いた小さなルームミラー越しに、私をじっと覗き込んでいる。
この生涯野獣の狩猟に身を置いてきた、まもなく死を迎えてもおかしくないほど黄色く血走った斜視からは、いつも野性的な汚らわしい匂いが漂った。祖父の家の人知れない倉庫の梁に吊るされた、皮を剥がれ内臓を除かれ血の抜かれた鹿や猪の鮮やかな身肉を、じっと黙って見物しているときだって、そして口にしているときだって、私がその悪臭から逃げることができない身のすくむ思いをしたのはなぜだったか?
私は段々と熱病に侵されて霞んだ目が覚めてくる気がした。
まだ残り熱の燻る瞼を擦り、それから風呂黴のように生臭い加齢臭の染みついた助手席から半身を離すと、雪水の湿気で曇った窓硝子を指で脱ぐい、夜更けてきた空を眺めた。