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私は敢えてお悧巧に、逆らわずに答えて、パジャマを着替えに、外出の身支度のために、家の中に戻った。くすんだベージュのよれよれのズボン、灰色のほつれたセーター、黒色の薄手の防寒着、つかいっぱしりの召使さながらの祖父が少しだけ不憫に思えたのである。
私は熱がまたぶり返さないよう、分厚く服を数枚重ねて着込んだ。祖父のために毛糸のマフラーを持っていった。祖父は不器用に、意図しない威圧を孕んだ不器用な笑顔を見せて喜んだ。
私たちは小高く降り積もった雪の中、忙しく軽トラックに乗り込み、それからまた、質問という形式でしか会話のできない祖父に何か尋ねられるたびに「うん、うん」としか返さないでいると、私こそ臆病な操り人形のように思えて、自分が憎たらしい。このようにことあるごとに話し相手にすら自己嫌悪を促されるのが私の習性だ。
自己嫌悪に耐えかねて代わりに「お婆ちゃんは?」と私が訊くと、「先に寺に行ったわ」と祖父はあまり話題にしたくないように答え、やはり話は長続きしない。