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私は恭しくその裸体に触れないように女神に寄り添って、まず目を瞑ってみる。目を瞑って、それからまた目を開く。それを何度か繰り返してみても、目の前にはやはり美しい女神が目を閉ざして横たわっている。
月や星にも、太陽にも、何物に照らされず、不可侵な白光を己の身体に纏わせて、今にも動き出しそうで動かない美……自分もやがてこの一部となるのだろうか。それ自体にはなれなくとも……。私はまた目を瞑る。今度は眠りのように長く。
私は穏やかな死の揺籃に揺られながら、優しい子守唄を聞いているような気分だった。そのときはいずれ来る。私の肉体と魂が細かく分解されて、彼女に吸収されその一部となって、永遠にこの死の都に眠るとき。私が輪廻の呪縛から解放されて、死そのものと融合を果たすとき。