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それから目にしたものも、どれもこれもおかしなもので、時々『死の花』とは別に木のようなものも生えていて、この木はどうやら人間の太腿とふくらはぎが上下逆さまになって、足指の開いた足裏が上を向いているらしい。この『死の木』には実がなっていて、その見た目は眼球だったり、頭蓋骨だったりする。
たまに思いがけず何か踏んづけたような気がして足元を見ると、私は夥しい数の死人の身体(手足が無かったり、頭が無かったり、ものによって様々)の上に立っていることもある。どれも幻想にしては生々しく鮮明なものばかりだ。
そして、この奇妙な道行は、あの不思議な『死の花』の咲き乱れる、美しい花園へと行き着く。花園はその中央へ向かって緩やかに堆く膨らんでいて、その円墳丘のようになったところに、私は見覚えのあるものを見つけた。
そこに安置されていたのは、あの六歳の日に見えた、長い手脚を携え、力無く半目を閉ざした、切り立った鼻先とアルカイクな微笑の薄紫の唇の、私の女神的屍体に他ならなかった。私は光栄にも彼女の領界に招かれたのだと思った。