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禁域  作者: 禅海
第一章
53/204

53

 ただ除雪のせいだけでこのような高熱を出すだろうか? しかしそう思ったところでインフルエンザのような感染症を貰うほど、他人との接触を好むような私でもない。私はこれまで一度も自宅に数少ない友人を招いたことすらない。

 するとこの原因不明の致死性すら疑うような(おぞ)ましい熱病は、ある想像力の乏しい幼稚な迷信を生む。それは、私の信仰心の欠如に対する、仏の怒りと天罰なのではないかという、唯一思い当たる節のある私の悪徳である。

 私はまた手首の数珠に本心を見抜かれたのではないか? 明日の祭礼が未曾有の大雪に吞み込まれて消失すれば良いのにと私が除雪の片時に願ったのは確かである。なぜ下らない行事のために下らない肉体作業を強いられなければならない? それが御仏の訓戒か? 死に至るまでに一つでも多く徳を積みなさいとでも? だとしたら仏教というのは、遠回りな慈善的自殺を私たちに勧めているに違いない。

 生きることとは、人生に於ける最も遠回りで自堕落な自殺である。悟りある自殺に至るための善行を今のうちに積んでおけという衆生済度(しゅじょうさいど)の罠に、私はまんまと嵌められたのだ。仏の筋書き通りの自殺を選ばなければ、私はこの閉鎖的な街と人々から逃げ出さない限りは、他殺されるほかないのではないか。……


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