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小学生最後の冬を迎えた日のことである。
雪上がりの空はこころもち優しく翳り、野山は白化粧の深い眠りに落ち、氷霜の降りた田畑は一旦は誇らしい無へと還り、川辺に寄せる僅かな潺の音すらも、宸翰を奉読する官吏の如き厳かな敬服を尽くしている。
愛日の眩しい朝、私たち一家は揃って、毎年の恒例で菩提寺の年末祭礼に出向く予定になっていた。その上この年は、真戸家の当主、つまり私の父が、祭礼の総代の役目を受け持っている、つまり真戸家にとってこれほどの名誉は他にない、重大な使命を司る約束の日なのである。