表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁域  作者: 禅海
第一章
47/204

47

 そんなある種の孤独(自分が思っているよりも自分自身は普通であるということに感じる孤独)を未熟な抽象画にしたような私が小学六年生を迎えた頃、クラスで詩を書いてみるという国語の授業があったとき、私は天賦の才能など一切無いなりに次のような詩を書いたことがある。

 それを幼き日の自己改変の証として書き記しておこう。


 いつのことだっただろうか。おそらくは今よりもずっと幼い日のことである。

 雨曇りの空を、ぼくは枯死した桐の巨木の根元に尻もちをついてもたれながら見上げている。ぼくはその日、天気予報で雨が降ることを知っていて、宿るための葉の一枚もない枯れ樹の下を頼ったのである。

 じきに遠方の山々がざわめきだして、樹海の上に嵐から逃れようとする黒い海鳥の群れが霧散し、それが静まり返った頃、沖合の大波のような雨雲は、瑞然とした野原に穏やかな驟雨を招いた。

 雨脚はぼくというぼくを踏み荒らし、服の上下を、下着と靴下を皮膚に吸い付かせ、獣の体毛が獣の身体の組織そのものであるのと同じように、ぼくを一匹の、裸の獣にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ