47/204
47
そんなある種の孤独(自分が思っているよりも自分自身は普通であるということに感じる孤独)を未熟な抽象画にしたような私が小学六年生を迎えた頃、クラスで詩を書いてみるという国語の授業があったとき、私は天賦の才能など一切無いなりに次のような詩を書いたことがある。
それを幼き日の自己改変の証として書き記しておこう。
いつのことだっただろうか。おそらくは今よりもずっと幼い日のことである。
雨曇りの空を、ぼくは枯死した桐の巨木の根元に尻もちをついてもたれながら見上げている。ぼくはその日、天気予報で雨が降ることを知っていて、宿るための葉の一枚もない枯れ樹の下を頼ったのである。
じきに遠方の山々がざわめきだして、樹海の上に嵐から逃れようとする黒い海鳥の群れが霧散し、それが静まり返った頃、沖合の大波のような雨雲は、瑞然とした野原に穏やかな驟雨を招いた。
雨脚はぼくというぼくを踏み荒らし、服の上下を、下着と靴下を皮膚に吸い付かせ、獣の体毛が獣の身体の組織そのものであるのと同じように、ぼくを一匹の、裸の獣にした。