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あの日以来、私の性と美に対する執着が極めて特殊なものへと変貌したことは、言うまでもない。もっとも私の求める美というものが、少なくとも普通の、普遍な、当たり障りのない広汎な特徴を基本としていて、そこから非常に狭い領域へ収斂されたものであるということは、また重要な事実である。
私からすれば、屍体を愛する感覚はそれを改めて意識しなければ特別奇矯な感覚などではなくて、寧ろそこらの文化人たちが、正装したりおめかししたりして、都会の大きな美術館までわざわざ出向いて、ある期間だけ特別展示されている有名な絵画や彫像を観て、ああなんて美しいのだろうと感嘆するのと、殆ど変わりはしない。