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三
私のような倒錯者の類型は、人類の歴史に於いて既に夥しい数の症例が見出されているが、それでも未だに明らかにその病理的解明が進んでいない領域であるとされる。
フロイト派の識者をもってすると、私のような者は総じて幼少期に見た、『眠っている母親の姿』に抱いた愛情が慾情へと転化するのだとか、眠っている相手との性的接触がこの顕在化の端緒であると主張するが、これについては確かに私も似たような感覚を、かの鳥の屍体を抱いた時に覚えたと言わざるを得ない。
ただし私のように屍体との接触が即座に倒錯と繋属する例は、どれほど認められているだろうか。もしや私の場合、如何なる条件なしに本能が呼び覚まされたとでもいうべきではないか。ある踏むべき段階を踏まず、唐突にその本質が表面化すること、それは多方面で活躍してきた数多くの天才たちと同じような……無論彼らとは到底並べ語るべくもないまでも、彼らが具備する生まれつきの特質といった方が、私にはもっともらしく思える。