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ただ僕にはどうも、僕が今死のうと思っている理由が、決してこれだけで済む話のようには思えません。きっと地獄の奥には、さらなる禁域へと繋がる固く閉ざされた扉が隠されているに違いないのです。
それはつまり僕が悪魔の被害者になる、ということではなくて、僕――僕自身すらその正体を疑う僕という存在が、まるで悪魔が、人間の享受する平和を意味もなくただ本能的に嫌うように、平和に包まれて漫然と生きることが、そして何故漫然と生きているかが、それこそ生まれたときからずっと、訳の分からない数学方程式が黒板に書かれていくさまを、首を傾げてただぼっと他人事のように眺めているかのように、いまいち分からないでいる僕自身こそが、何よりも怖くて仕方ないのです。