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恐る恐る、私はキジバトの屍骸の方へ這い寄った。四つん這いでそれをまじまじと観察すると、何を思ったか、自分でもよく分からないまま、死後硬直のさなかの身体を、私は躊躇せず拾い上げて胸の中に抱えた。
まだ温かく、柔らかく、しかし緊張して、己の身に何が起きたかすら分かっていないままの身体……後年、私がこれとよく似た実に汚らわしいものをこの身をもって知ることにならざるを得なかったのは、他ならぬ人間の宿命か? 今から死へ向かおうとするものと、今から新しい愛か何かを育もうとするものが、この一瞬の傷ましい抱擁に於いて、その慈愛の対象という意味では全くの等質に成り下がっていること、しかしそれらは概念的意味では、想像しがたいほどの二項対立的倫理のもと著しく隔たれているということ。……