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あの鶴たちは、どこか遠方の果てにある、人間に支配された邪な国に愛想をつかして翼を広げ、長大な大地と広大な海を越えたのちに、目下に豊かな葦の繁る国と、穢れのない小さな池沼を見つけた。
危険な長旅のすえ、どうにか安息の場所にたどり着いたと思い、これまでの疲れを癒そうと、ようやく水辺に紅い頭を俯けて落ち着けたと思ったところで、しかしそれは実は天上に潜み待ち構えていた眷属たちが、仏の退屈を解消するために仕掛けた罠であり、不運にも自分たちの群れが、そのいわば大きな動物園の檻の中に捕らえられてしまったことに気付いたところなのだ。
水辺も備わっていて空も広々としているようで、その実、宗教画という出口のない閉鎖空間から単調な・恣意的な生態を強いられて、しかも永遠に他者からじろじろと好奇の眼差しを向けられ続ける、あれはそういう苦難の宿命がこれからも続くことを悟った悲しき鶴たちの姿なのだ。