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母は相変わらず神経質に、必要もなく気持ち身体を縮こまらせて、慎重に一段ずつ足元を重ね、父は大袈裟な身振り手振りを交えて、紅葉の真の美しさを自分だけが分かり得ているかのように高評する。
私は二人の後をぴったりついていった。
「しーくん、きーちゃん、もうすぐ着くよ。疲れてない? 大丈夫?」
母の心配性な顔が振り返ると、私はそれにうんと頷いた。
六歳の私はもう、少しだけ重大な任務を任されるようになっていた。取り扱いを間違えば簡単に壊れてしまいそうなほど小さな手を、特別の注意を払って握ってやると、この無垢な妹は、「しーくんの手あったかーい」といって、無邪気に満面の笑みを浮かべて、私の気持ちが分かるわけでもなく、短い手足を嬉しそうにじたばたさせるのである。