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そして予定通り、翌月都琉は日本を経った。彼女の旅立ちを祝うかのように、その日は十二月にもなって信じられないほどの快晴だった。それから数日して、新人コンテストの公式サイト上で、都琉の脚本が二次審査を無事通過したことが発表された。私は結果を知ったその日のうちに、自殺することを決めた。
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私は最期にアパートを出る前に、両親に嘘だらけの遺書を書き、それを敢えて元通りつなぎ合わせられるように机の上で破いた。
自殺の理由など最早私にはどうだって良い。私に必要なのは、ただ死ぬという事実だけであり、そうするとあの遺書が果たす役目とは、私の自殺が他者の目と心を通したとき、いかにも悲惨な、衝撃的な悲しみをもって、少しでも彼らに打撃を与えさせるということ、ただそれだけである。
またとない静けさに包まれた夕暮れが、山際の坂道を登る私を絶えず見下ろしている。投身自殺をしようと私は考えていたが、はっきりいってどんな死に方でも構わない。何度も何度も頭を過るように、私にはただ死という事実だけが重要だ。