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私はまるで雷に打たれて頭がおかしくなったかのように、内心とてつもなく笑えて来た。こんなにも私は都琉と隔たれている。こんなにも私と都琉には温度差がある。こんなにも私と都琉の愛は破綻している……。
私から何か言う必要は最早何一つとしてなかった。私はただ都琉の謝罪を穏和に受け入れればよいだけだった。
「謝らなくていいよ」
「ごめん……本当にごめんなさい」
「謝らなくていいってば。都琉さんは何も悪くない。何も悪くないんだよ」
都琉が悲しみのあまり嗚咽を禁じ得ず、遂には防波堤が決壊したように泣き出したとき、そんな彼女の姿に私は何らかの共感を覚えて、供に悲しんではいただろうか? いや、そんなことはあり得ない。私はその瞬間をもって、間違いなく、人生最大最高の幸福を感じたのだから。
それから私たちが会うことは二度となかった。私たちは男女関係に於いてもっとも平穏な別離を果たしたといってよかった。