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「仕事? 来月? フランス?」……頭の中がぐちゃぐちゃだった。
「ねえ善生くん。ずっと触れないけど分かってるんでしょ? 私は善生くんのことが好き。全部は知らないけど全部を知りたいくらい好き。善生くんとずっと一緒にいたい。喜子ちゃんとももっとお喋りしたい。脚本の結果だってちゃんと一緒に知りたい。前のあれだって嘘じゃない。だけど、だけど……私、家族のこともおんなじくらい大事だから、日本で一人暮らしできる自身はないから……ごめん」
都琉は俯く。目元には涙が光る。私はただ衝撃を受けて固まっている。
……ああ、やっぱり私はこの女とは何もかも最初から真逆だったのだ。私はこの女を愛してなどいない。その全てを知りたいなんて思ったことはない。脚本の内容やら出来だって本当はさらさら興味はない。あのキスは偽りだ。それに喜子の居ない家族なんて、両親なんて、これっぽっちも大事じゃない。