189/204
189
「すいません、その、状況がよく分からないんですけど、何かあったんですか」
私が聞くと担任は言葉を詰まらせて、
「……ああ、ついさっき真戸くんのお母さんから電話があってね」
その時の担任はもはや一教師のあるべき姿には見えず、どちらかと言えば心理カウンセラーのようで、その皮脂で汚れた眼鏡の奥には、それまで私が誰からも向けられたことがないほど同情的な悲しみと、深刻な戸惑いが複雑に同居していた。
担任は顔中冷や汗を流しながら暫く黙って、おそらく彼自身その報告のために気持ちを整理してから、
「妹さんが、今朝方亡くなられたそうです」
⁂