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「真戸! 真戸善生はいるか!」
肥満体型の中年男の担任が大声で口にしたのは、予想もしない、私の名前だった。一様に冷徹な眼差しが私に向けられる。
「はい。います」
私は無感情に挙手して、入口で息を切らす担任を見る。
「ああいたか。真戸、今すぐ先生と職員室に来なさい。さあ立って」
「どうかしたんですか」
「それは職員室で話します」
大嫌いな夥しい奇異の目の中を辟易しながら、私はしずかに廊下に出た。「さあ行きましょう」と言われ、何事かも分からないまま、ただどうせ大したことじゃないだろうと過信して、私は言われるままにした。