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私が意地悪く答えを渋ってみせると、都琉は絶対に聞き出してやるという執念深い目で私を見つめてくる。
「やっぱ秘密」
「ええ、ズルい。私は見せるのすっごく恥ずかしかったのに。善生くんはまだ感想の一つもないじゃん。いい加減少しだけでいいから何か聞かせてよ」
確かにそう言われては仕方ないので、私は少しだけ感想を述べることにした。邪魔に感じて机の隅に追いやろうと飲み切ったコーヒーカップを移動させるとき、その丸底の焦げ茶色の沈着が、私の些細な動揺を読むかのようにぐるぐると渦巻いて見える。
「……最後に主人公が男の子を追いかけて強引にキスするシーンが、結構衝撃的だった。いい意味で。その、繊細な都琉さんがこういうシーンを描くのは意外だったというか」
私は実に何気ない顔でこう口にしたが、しかし当の都琉をふと見てみると、彼女ははっとしたような顔をして、今までどこか気まずそうに飲んでいたコーヒーのカップを机に置き、そのまま放心したように茫然としている。