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三
かくも純粋な少女は、雨の降る午後のカフェという彼女の唯一の精神的楽園に、一つの豊潤な果実を見出したのである。彼女が手にした果実は時に苦く、時に甘く、時に酸っぱい不思議さをもって、彼女の一途な心を、一人の儚げな少女の拠り所から、一人の独立した女性の気高さとして昇華させるに至る。
さて一人の少女がある肉体的・精神的進歩をもって一人の女性となったとき、改めてこの果実をどう吟味すべきであろうか? もうこの果実は食べ飽きただろうか? もうこの果実は不要であるだろうか? いやまだこの果実をその肉体と精神は栄養とし続けるだろうか? しかし彼女はそのどの答えをも選びはしなかった。彼女は最後に、これからもこの果実を自らの手でさらに育むことに決めたのである。
ひとえに優れた果実とは、それを食する以上に、一から十まで丹念に責任をもって育まねばならないものであるという前提を、彼女は見落としてはいなかった。この物語はそのような、彼女が彼という果実に出会い、それを味わい、さらには栽培しようとする季節の一巡を、一つの虚構的現実世界の実験室に放置して、少女の心の自発的成長をその繊細な心拍そのもののような緻密な情緒をもって構成した、極めて真っ当な青春劇場と言ってよいだろう。