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……いやあ、待て、違うな。そうだ。そうじゃない。違うな。お前はそういう理由でこの女に近寄ったんじゃないな。ああそうだ、分かったぞ。
間違いない。お前は見たかったんだ。この女が目の前で死ぬ瞬間を! ああ、そうだ! きっとそうに違いない! お前はこの女が、懸命な救命活動の甲斐もなく、無残に、孤独に、美しく、そして減衰振動のあの均整な曲線のように、着実にゆっくりと、お前の腕に抱かれて死んでゆくことを期待したのだ!
ああそうか! やっぱりそうだ! お前は真性の倒錯者だ。滑稽なほどに。どうだ、違うか? もし違うんだというなら、何か反論でもしてみたらどうだ!
さあ、答えてみろ!
……全く反論できなかった。私は必死に慣れない圧迫運動を続けながら、しかし微塵の汗も流してはいなかった。
私には今、一つの明確な実感があった。目の前の女が、着実に死に向かいつつあるという揺るぎない実感。
圧迫のたび私が両手に明瞭に感じるのは、女の乳房の柔らかな感触や、小さな心拍の反動などではなく、この女がひとえに死んでくれればいいという凶悪殺人犯のような、私自身の強い衝動に他ならなかったのである。