表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁域  作者: 禅海
第三章
165/204

165

 幾つもの露店と人々の交々(こもごも)とした煌めき、終わりを知らない夜通しの祭囃子の喧騒。そして都琉の幼げで(うら)らかな声と眼差し。

 人間が幸福を感じるのは、やはりこのような実に単純な一瞬であろうか。

 もしそうならば、私はやはりこの一瞬に介在する私の自我を幸福の事実として認めなければならなかったし、私は雑沓の中で自分もまたその一部として存在している事実を幸福というのだということを未だ知らず、だが知らないがゆえにこの瞬間を幸福の事実として曖昧に認めることが出来たのかもしれなかった――私は都琉の手を強く握り返した。それが本当に言いたかった孤独の答えであるかのように。

 都琉はもはや驚いた顔をするわけでもなく、この時間を永遠に掌の中に閉じ込めるかのように、非常に大人びた顔で指をさらに深く絡ませてくる。柔らかいというよりはもっと、毅然(きぜん)とした塊がそこに感じられた。強く、熱く、静かな、都琉の鼓動とでもいうべき拍動と私は重なった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ