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笛や太鼓の軽快な祭囃子が響き渡る中、お面売りの店、かき氷を売る店、金魚すくいに射的、たこ焼きにカステラ、大判焼きを売る店……などが、千羽鶴のように連なっている。どこからか鈴虫の涼しい唄声が聞こえる。小さな虫かごに木屑と昆虫ゼリーを入れて、カブトムシやクワガタムシを売る店もある。
熱のこもった屋台の中の、鉢巻を巻いた汗まみれの商売人たちは皆、呑気な祭り客を前にして、命懸けの、一世一代の勝負時の、鬼気迫る顔つきをしていた。それはまさに人間が生きる姿そのものであった。誰かが楽をするためには、誰かが苦しまねばならない。……彼らは皆、自らすすんで、今日その苦役を買って出ているのである。
真黒に日焼けした、いかにも粗暴そうな逞しい顔つきの客引きの男の、聞き慣れない訛りに釣られた白人の子どもが、興味津々にそこら中を駆け回るのを、その両親らしい背の高い、ホオジロザメとハクトウワシのような困り顔が、「エイミー、ジャストステイカルム」などと慌てふためくのを見て、私と都琉はくすりと笑った。