表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁域  作者: 禅海
第三章
160/204

160

 「ああ、そうなんだ……。一人で待たせちゃってごめんね」


 都琉は、彼女が待ち合わせに遅れたことを私がなんとも思っていないことなど知らなさそうに、申し訳のないはにかみを見せた。私にはその微笑が、全編白黒で撮られたはずの映画中に、ただ一輪だけ鮮やかに着色された花の止め絵の幻想を観間違えたようにも思われた。


「髪、切ったんだ」


「そう、夏だし、伸ばしすぎちゃうと面倒だから……」


 これといった感想を求められるようなこともないので、私はとりあえず黙って相応に微笑した。

 都琉は腰まで伸ばしていた海藻のような緩い癖髪を、ばっさりと肩甲骨くらいまでの長さに切り揃えていた。きっと普段は額をカーテンのように覆っているはずの前髪を、枯淡(こたん)な花柄の髪飾りで左に除けて、編み込んだ横髪を後ろに回してハーフアップにした後れ毛を金色の(かんざし)で留めている。薄い水色地に小さく月見草の描かれた、控えめな浴衣の襟首に露わな薄桃色の肌は、残暑の激しい晩夏の外遊に軽く湯だった、由緒ある貴族令嬢のような血色をしていた。


「よさこいはどうだった?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ