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……全て嘘だった。
私にそのような未来が訪れるはずがなかった。私自身の亡霊は、今にも血が噴き出しそうなくらい激しく頭を掻きむしっていた。なぜ? 答えは簡単だった。間違いはない。
私は誰かを愛してやいなかった。いつも愛しているふりをしているだけだった。それはどれだけその状況を頭の中で仮装しようと努めても、あの美しい都琉の掌の温かさや唇の甘さを、やはり点で想像できないことからも明らかだった。ただ相手が都琉だからというわけではない。おそらくは相手が誰だとしても、私はその他人との間に或る強固な肉体的・精神的重合の未来を予見できない。どれだけ苦心しようがそれだけは見える気がしないのだ。
理由は、言うまでもなかった。
しかも私は都琉に対して実に不誠実だった。私はこともあろうに今自分が一瞬何を期待したかはっきり承知していた。
ああそうだ、都琉があの美貌のまま、冬の彼方に凍結されて死んでいたらいいのに――こうなると私の幸福は、結局分かりきっていた一つの命題に回帰する。