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すると私の頭の中に、あるはずのない未来図が浮かんだ。
私と都琉が、映画終わりにカフェの窓際で仲睦まじく談笑する姿を、私の似姿の青白い亡霊が店の外から眺めているところだった。
金装飾の縁のウィンドウ越しに見える二人の戯れな横顔は、喜劇の一場面を描いた名高い絵画にも見えた。二人は小一時間そこで過ごした後、街灯に七色の光が灯るのを目安に会計を済ませ店を出ると、どちらかが提案を示すわけでもなく許可を求めるわけでもなく、当たり前のように裸の掌を温め合うように繋いで街路を歩いてゆく。
月明かりの天空から二人の間に羽毛の生えた雪が降り始めた。白い息を吐きながら、二人が互いの赤くなった鼻先を見て笑いながら喋っていると、ふと一瞬、二人の間に沈黙と硬直が生まれる。二人はその静寂を口実に、希望に緩んだ唇を重ねる。そしてまた、大衆の目に囲まれた恥ずかしげなスリルを感じながら、何事もなかったかのように話し始める。
そんな幸せな未来はそのうち誰にでも必ず訪れると、冬の夜空は孤独な亡霊に語りかける――。