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「チッ、頭だけは良いくせに……。それじゃあやっぱパスタばっかアホみたいに食べてるわけだわ。頭とか身体とか言う前に心に栄養が足りないんじゃないの……」
喜子がこのとき指摘しようとしたに違いない私の勘の鈍さは、決して生まれついて鈍いのではなかった。寧ろ喜子の言いたいことは何もかも分かって、つまり私は、やはり長年の手慣れた鈍感をこねくり回しているだけなのだった。
そして他人の言葉には極めて神経質な私が悟った、あの差し迫った愛の疑惑は、もう決して憶測の範疇を出ないどころか、完全な確信に変わってしまっていた。