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周囲が人間として自然な成長段階を一つずつ進めていく夏色の昼下がりに、例年通り晴れ切らない空の雲間から天真爛漫な顔をいまだぎらぎら覗かせる太陽と、穏やかな日本海の潮を多分に含んだ蒸気と熱気を、生来日焼けしにくい蛞蝓のように白っぽい肌に感じながら、午前限りの課外から引き上げる最中、私は喜子からの突然の着信に汗ばんだ声で応えていた。
「また近いうちに様子見に行くから。ああそうそう、今度は冷蔵庫の中身に注意しておくように」
「また来るの? こんな毎日、四六時中暑い日が続いてんのに、わざわざ来ることもないだろに。……はは、きーちゃんが来る前に、冷蔵庫の中身も全部溶けてなくなってんじゃないかな?」