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だがこの意味不明な証明が、私に何らかの安定をもたらしたのは確かである。例えば、夏季休業中の課外授業で顔を合わせるたびに、少しずつ顔つきに変化が現れるクラスメイトたちについても、私が特段大事だと思わずに済んだことは、この証明の正しさを暗喩しているようでもあった。
急に眼鏡を外して両眼にコンタクトレンズを入れ、髪型を流行りのスタイルに変えて薄っすら安物の整髪剤の匂いを付けて、清潔でハンサムになっていく青春真っ最中な野獣たちが、おそらくは『実に真っ当な』やり方で、若く可憐な少女たちの身と心を姑息な罠に掛けようという姿を、驚くほど冷淡で嘘つきな笑顔を携えて受け入れながら、まるで牧歌的農家のように、他人事に過ぎない日常だと静観できるほどの精神的余裕に、私は支えられていたのである。
それでいて目に見えない透明な仕切りで男女が隔たれた、結局はお利口で物静かな優等生ばかりの教室はまるで、その誰もが異性の形、匂い、触感について異常に警戒的な恥ずかしい男たちと、そういう男の扱いに非常に手慣れた女たちの集う、珍奇な仮装パーティー会場の有様だった。