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名誉教授のありがたい講義ののち、見学者一行は大学のキャンパス内をうろついた。法科系以外にも幾つもの学部研究科のビルが、東京の狭い敷地内に、早朝の通勤電車のサラリーマンのように互いを牽制し合いながら身を寄せ合っていた。
ふとビルの間を見上げると、そこには目が眩むほど真っ青な空が見え隠れした。噂に聞いた東京の雲一つない空は、北陸の曇り空より遥かに綺麗だと私は思った。
……私にとって一つ重要なことがあった。たった七十年ほど前、かつてあの夜空からは超高温の炎と数多の死が降っていたのだ――するとあの輝かしいほどの青は、悲壮な死の業火の輻射光なのかもしれない。ああもしかしたら、今度は知らないうちに、あのお偉い平和主義者たちが危惧するように、あの空から突然弾道ミサイルでも降ってくるかもしれない。
さてそのとき東京は罪のない屍体で埋め尽くされるのだろうか? あそこもここも? まるで聖櫃の安息地のように? ああそんなことになったらなんて素晴らしいんだろう――本当はそんなふうに果てしなく不謹慎に歪んだ興奮や期待を寄せて東京にやって来たのだというような者は、おそらく私だけだ。