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そしてこのいかにも愛玩じみて可愛げのある愛称には、しかしそれに全く反していつも薄気味悪い常套句が添えられるのが私の家での日常だった。「しーくん、お仏壇にお祈りはした?」「しーくん、毎日の幸福と平和は、仏様のおかげやからね」「しーくん、悪い子は、ちゃんと仏様が見張っているからね」……大人の用いる言葉は、いつも口の中のどこかに黴でも生えているかのように胡散臭く脅迫じみていた。
私は少なくともそう感じるほどには、信心深い両親の我が子に対する同族的な期待に背いて、仏や神の存在を認め難いように生まれたらしいのだった。