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翌日、もう時刻も十一時を過ぎようという頃にようやく目覚めると、机上のスマートフォンには都琉からの連絡通知がいくつか表示されてあった。内容は大体以下の通りである。
「脚本の最後の詰めに集中するので、私はしばらく……夏休みの中頃までは映画を観に行きません。けれど善生くんが面白いと言ってくれるようなものを必ず書きます。もう最初の方は読んでもらったけれど、完成したら最後まで必ず読んでください」――
「分かった、必ず読みます。それから返事が遅くなってごめん」と返信したあと、私はそんな悠長な自分自身に呆れてスマートフォンを壁に投げつけた。
客観的にもなんの不自然さも感じない日常会話的な返事をした自分に対し、そして恋愛に於ける下らない腹の裡の読み合いのようなことをして、都琉からの報せに微々心を欺かれ裏切られたような気持ちを覚えなどしている自分に対し、肩透かしのような失望を拭えなかったためである。