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「うん確かに変だなーって私も思ったけど。世間は美魔女がどうだ美容がどうだってばかり言ってるのに。でもね、喜子ちゃんはね、毎日笑って、表情筋が疲れて弛んで皴になるような人生を送るんだって。私感心しちゃった。私が中二のとき、そんなこと考えもしなかったもん」
密かな団欒に何らかの感傷を置きながら、私たちが丁度赤色に灯った信号機を前に足を止めたとき、俄かに車道のすぐ近くを一台のセダンが急スピードで横切った。
都琉が驚いて足をもつれさせて身体を反らすと、都琉の肩が私の上腕に触れ、そのまま身体ごともたれかかる形になった。
セダンのテールランプは麝香のような曵光を残しながら、エンジンの轟音を唸らせつつ遠のいた。
「あっ……ごめん」
俯いた都琉の唇が私の顎先に近づいた。白桃のような地肌に、熟れた果肉の中心が膨らんだような柔らかい隆起は、桃色、橙色のそれに、沸騰したような血色を湛えている。