115/204
115
雲の晴れ間には、微かな星々が点々とする。
宇宙の宝石箱とでも例えるべき夏の夜空は、まるで無数の細孔から天上界の燈火が漏れ出ているかのようである。この時期なら北にポラリス、南にアンタレス、東にデネブ、アルタイル、ベガ、西にレグルスが見える……はずだが、私の目ではその全てを見つけ出すことはできない。
「……あんまり構わないでいいよ。すぐに調子に乗るから。あいつは昔からそうなんだ。いつもお祭り気分というか、頭の中に育てたお花畑の中を裸足で走り回ってんだよ。しかも育てたそばから踏み荒らしたって構いやしないだろうな」
「ははは。楽しそうでいいじゃん。兄妹同士でしーくんきーちゃん呼びなくらい仲もよさそうでさ」
「ああ昔からそうだから気付きもしなかったな。キモいってひかれるやつだ」
「キモくなんかないよ。寧ろ羨ましいなって思った。私ひとりっ子だしそれに……」
都琉はそこで一瞬、後ろ髪を引かれたように言葉を濁した。次に何か真面目なことを話そうとするとき、彼女はいつもそうやって間を取るのである。