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自然のうちに都琉に視線を奪われていることに気付きながらも、私はそれをやめられないでいた。喜子は隣でやはりにやにやしながら私の醜態を見つめている。
やがて都琉が私たちと、私たちの気まずい空気に気付く。都琉は私に声をかけようとしてしかし吃驚して取り乱す。そのように取り乱されては困る私は、しかしどう話し始めてよいか分からない。喜子はやっぱりまだにやにやしていて、どうも何か言いたげな・小生意気な顔をしている。
さてもこのような年頃の少女の愉しみを、私がこの時ほど憎んだことも他にない。
喜子は私の肩を気安く叩きながら、都琉に向かって一言、「妹です」とにやにやして言った。都琉は「い、妹さん?」と声を上ずらせた。私はどうにも無言で、ただ初めて妹を怒鳴りたいと思った。
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