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中学二年生で既に170センチ近い喜子には、見た目通りの威圧感と、それに見合った大人顔負けな責任感が備わっているようだった。彼女はその最も適切な取り扱い方法を知っていて、そのうちの一つが厭世的といえば聞こえの良い、怠惰な私への厳しい忠告である。
しかし彼女のそういう現実主義かつ自立主義な性格は、私とはまた異なる解釈を経て、やはり両親がそうさせたのであるところに、人間性の違いがもたらす絶望的な格差的社会構造のヒントを見つけることも出来よう。
「皆が毎日違うもの食べてるほうが僕からしたら不思議なんだけど。てか自炊って面倒やし、トルコ産パスタってアマゾンで10キロ二千円やぞ。食費節約、腹は膨れる、それでよくない?」
「よくない! 毎日の食事には健康と、それ以上に彩りが大事だって何回も言ってるのに……食事はおいしくて、楽しくないと。なんでこの兄はそんなことが分からんのか……」