表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁域  作者: 禅海
第二章
106/204

106

「そう。観光気分なのは毎度のことだろうけど、にしても服? その服だって随分新しそうに見えるけど?」


「相変わらず分かんない奴だな。新しいものと可愛いものが好きなの、女はね。もっと外の世界をよく歩いてみたら?」


 随分決めつけ気味に、偏屈にそう言い捨てて玄関棚に鞄を置いた喜子は、実際は彼女なりに一般的女社会の中で生きるためそのように自分に言い聞かせているのであろうことは、私には筒抜けだった。

 私の妹であるだけに風変わりな環境で育ち、欲得というのを激しく憎悪して外面ではなく内面を豊かにしろという洗脳教育を半ば当てにしていざ外界に出てみれば、そのような理想論は今の悲劇的人間社会の中では真に窮に瀕した時以外はなんの効力も発揮しないことを突き付けられるという衝撃的経験は、私たち兄妹に共通した一つのいわば苦難であった。

 だが彼女は少なくとも私よりずっと優れた前向き思考で、あの洗脳を完全に克服しかけているのがなんとなく分かる点では、兄ながら実に立派であると言えよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ