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カレンダーに特に印のない祝日と土日が並んだ三連休の中日、映画館へ出かける夕方まで予定もなく私が教科書を読んでいたところに、酷い頭痛を招きそうな暴悪具合でチャイムが鳴り響くと、先だった連絡もなく中学生の妹の喜子が突然訪ねてきた。
「しーくん、久しぶり! 元気してた?」
「久しぶりってほどでもないな。まあ上がって」
玄関ドアを開けた途端はた迷惑を感じる私に対する第一声は、いつもと一言一句違えずに、ただ太陽のようににっこり笑って、外出用の可愛らしい夏物の私服を着た喜子は、バスと市電を乗り継いで片道四十分かけて、F市街まで遊びに来た。
雨好きで晴れたときほど屋内に籠りがちな、蝸牛のように恬淡な私とは違い、それこそ燦々たる陽の下を舞い交う蝶のように活発・溌溂な喜子は、猛暑とはいえまだ梅雨が明けてそこそこであるのに、すでに顔や肩や腕は迷いなく陽に焼けて、産毛を剃った綺麗な素肌は琥珀色の輝きを放っている。
「今日は何しに来たの」
「今日は服買いに来た。あとは市内散策と、怠惰な兄の様子見に」