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禁域  作者: 禅海
第二章
104/204

104

 七月頭にしては、もう真夏かとも思い違うような猛暑が、連日の昼夜問わず続いている。クーラーなしに夜は眠れず、ただそうすると今度は喉が乾燥して痛むので、数日おきにクーラーをかけずに寝て起きた翌朝は、身体中汗まみれで目が覚める。

 夏蝉も昼と夜を間違えて地面から這い出てくるのではないかとすら思えるほど狂った暑熱の中では、近所の老人たちも人生最期の楽しみの一つの散歩すらすっかりやめて、その一方ここ数日のあいだ子どもたちは家の軒先で半裸になって、コミカルテイストなビニールプールに浸かって飛び出しては、はちゃめちゃに水遊びをして喜んでいる。子どもたちの水遊びは細かな雫を庭の四方八方へ撥ねさせて、その数粒が路地沿いの垣根にまで届いた。

 垣根の隅で人知れずしおらしく優しく咲いていた白い紫陽花(あじさい)も、今では使用済みのキッチンペーパーのように萎びて土色を帯びて腐臭を放ち、数滴の飛沫ではもはや助かる見込みもないほど弱々しいが、そのくたびれた花びらの上には、羽化したばかりと見える二羽の元気旺盛な夏アゲハが、酷く対照的に、一対の豪華な錦の翅紋様に金色(こんじき)の陽光を(まと)わせ戯れている。


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