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「それよりさ、もっと都琉さんのこと話してよ。やっぱり僕の話なんて聞いててもつまんないだろうし、いや都琉さんはどうか知らないけど、僕はどっちかって言うと飼い犬みたいに誰かの話を聞いてる方が得意なんだよね。……ほら、たとえばあれとか。この前言ってた、今書いてるっていう脚本。冒頭だけ話してくれたやつ。あれ、僕楽しみにしてるんだ」
私が苦し紛れに話題を変えようとする目の前で、都琉はアイスコーヒーのストローを咥えたまま、我を忘れて、ぶくぶくとコップの底に溺れたような泡を立てている。
「大丈夫?」
「えっ、ああ、大丈夫。えっと、この前の脚本の話だよね? 恥ずかしいな」
「恥ずかしいって。今になって?」
「いつまでも恥ずかしいよ。下手な脚本書いてないか不安だし、折角頑張って書いたものをさ、少しでも変だと思われたくないもん。脚本書いてること自体、まだ学校の友達にも、お父さんとお母さんにだって言ってないんだよ?」
「ならなんで僕なんかに話したりしたの」
「……それは映画好きな善生くんならって。変な意味じゃないよ?」