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それではあの記憶は一体何であったのだろうか――私は、結局はあの最古の記憶は私の想像か幻想か夢に過ぎないものなのだろうと、大人しく従順な子どもとして振舞って、敵前で降伏文書に調印するような痛恨の屈辱を奥歯で噛み殺しながら承服せざるを得なかったが、ならば今度はその明らかに不吉な・残酷な妄想か錯視かは、一体全体どうして私の裡に不条理に、やけに鮮明に宿っているのかという新たな疑問を、長い間抱いたまま忘却することはできなかった。
そして同時に、私はそれに加えて一つの諦めの悪い・不可能に近い野望を抱いた。それは、必ずあの記憶の現場に再び遭遇するという、自身の正当性の証明の実現なのだった。
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