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2.リンドの評価。








「いらっしゃいませ! リペア・ザ・メモリーズ……あ、リンドさん!」

「やあ、ずいぶんと繁盛しているようだね」

「おかげさまで!」



 オープンから数日。

 お客様の出入りが多くなってきた頃合いに、リンドさんがやってきた。

 彼はボクを見て笑うと、店内にいる人を数えるようにしてから大きく頷く。



「言っただろう? 忙しくなるってね」

「本当にびっくりしました。リンドさん、凄いですね」



 ボクはリンドさんの言葉に、道具の整理をしながら答えた。

 すると彼はまた笑って、こう口にする。



「あぁ、私が大々的に宣伝したからね」――と。



 え……?



「……えっと、どういうことです?」



 ボクが目を丸くすると、相手は嬉々としてこう言った。



「これでも私は、SSSランクパーティーのリーダーをしていてね。多くの冒険者が知り合いなのだが、そのほとんどに『素晴らしい修繕師がいる』と伝えたのだよ」

「え、ちょ……!? 待ってください!? そんな――」



 ボクはリンドさんの評価に、丸くした目を回す。

 最近になって店を開いた修繕師なのに、どうしてそこまで絶賛されているのか、その理由がまるで分からなかった。

 自己評価と彼の評価の差に、思わず眩暈を覚えながらボクはどうにか踏みとどまる。そして、一つ深呼吸をしてからこう伝えるのだった。



「あ、あの。応援して下さるのは嬉しいのですけど、その……」



 過大評価は、いずれ自分の首を絞めることになる。

 そう思っていたのだけど……。



「よお、修繕師さん! 今日も頼まれてくれるかい?」

「え、あ! はい!」



 そのタイミングで、数日前に指輪を直したお客様が声をかけてきた。

 どうやら今回もなにか、修繕してほしい物があるらしい。



「えっと、リンドさん。またあとで! 少し待っててください!」

「あぁ、良いとも」



 ボクは慌ててそう言ってから、お客様のもとへと向かうのだった。







「この数日でリピーターがいるなんて、凄いことじゃないか」



 接客をするライルを見て、リンドはそう満足げに呟いた。

 そして一度、店の外に出てから――。




「これなら、彼女も安心して任せてくれるだろうね」




 とある少女のことを考えて、微笑んだ。

 そして、その女の子の待つ近くの広場へと足を運ぶのである。



「わたくしを、いつまで待たせるのですか? ――リンド」

「申し訳ございません、アーシャ様」



 リンドを先に認めたその人物は、綺麗な青の髪をしていた。

 やや攻撃的な印象を受ける金の瞳をした彼女は、整った顔に不満の色を浮かべる。そして、小さな胸を張りながらこう言うのだった。



「本当に、信じていいのですよね?」――と。



 少女――アーシャの言葉に、剣士は笑う。

 ゆっくりと頷いて、彼はこう告げるのだった。



「ご安心を。今から紹介するのは――」



 店から、先ほどの客が出るのを遠巻きに確認しながら。




「おそらく、稀代の天才修繕師ですよ」――と。



 


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