1.王族からの依頼。
ここから第3章。
ライル、出世したなぁ……。
――ある日のこと。
「え、えー……陛下におかれましては、本日もお日柄が良く……?」
「ライルさん。それ、どう考えてもおかしいですよ?」
「はっはっは! そう硬くなるな、修繕師よ!」
「あ、あはは……」
ボクはどういうわけか、国王陛下の御前にいた。
しかも謁見の間みたいに畏まった場所でなく、陛下の私室である。隣にいるアーシャが少し呆れたようにため息をつくが、ボクとしてはそれを気にする余裕もなかった。そんなわけで、一介の平民である自分がどうしてここにいるのか。
事の発端は、半月ほど前までさかのぼる。
◆
「え、王女様からの依頼……?」
「はい。フラン王女様にお会いしてきたのですが、そこでライルさんの話が出まして。なにやら、修繕してほしい物がある、と」
「ほ、ほへぇ……」
店仕舞いを進めていると、アーシャからそんな話をされた。
王族からの依頼。話のあまりの大きさに、ボクは思わず変な声を漏らした。あまりに現実味がなさすぎるため、手が止まってしまう。
そんなボクを見かねてか、少女はこう言った。
「フラン様も、それに国王陛下も、一度ライルさんに会いたいと仰っていました。それだけ、貴方は期待されているということです」――と。
ボクは彼女の言葉を聞いて、ついつい首を傾げてしまった。
たしかに最近、貴族のお客様も増えている。評判も上々なようで、それ自体はとても嬉しいことだった。しかし――。
「そんな、ボクはボクにできる範囲でやってるだけで……」
そんな、特別なことをしている覚えはない。
そのつもり、だったのだけど……。
「それで、良いんですよ。ライルさんは」
「え、それでいい……?」
こちらの困惑に、アーシャは優しく微笑んだ。
訊き返すと彼女は静かに、しかし温かくこう口にする。
「貴方は貴方らしく、それで良いのです。それを皆さんが、認めているのですから」
「…………そう、か」
「はい。だから、もっと自信を持ってください」
「…………」
アーシャの元気な笑顔に、どこか勇気が湧いてきた。
だから――。
「そっか。それなら――」
ボクは、大きく頷いてこう答えたのだ。
「その依頼、受けることにするよ!」
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