5.妖精の見える子供たち。
ファンシー?な展開ですね。
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ボクたちは、近くにあった小川の傍に腰かけた。
そして、最初にこう訊ねる。
「さっきの子たちは、どういうことなの?」
「あいつら、犯罪組織の末端なんです。僕が持ってた髪飾りが高価なものだって、そう考えて襲ってきたんだと思います」
「そう、なんだ……」
ボクは薄々に気付いていたが、テーニャの言葉に沈んだ気持ちになった。
あんな幼い子供たちが、犯罪に手を染めている。いくら生活のためとはいえ、その事実はどうにも飲み込むことが難しかった。
しかし、いつまでも気落ちしていられない。
ボクは話題を変えるため、テーニャにこう言った。
「でも、キミは犯罪に加担しないんだね」
すると彼はこちらを見て、苦笑いを浮かべる。
恥ずかしそうに、こう答えるのだった。
「はい……。妖精たちに、怒られますから」
「妖精、たち……?」
突拍子のない言葉に、ボクは思わず首を傾げてしまう。
それを察したのかテーニャは、少し考えてからこう口にした。
「僕、昔から妖精の姿が見えるんです。彼らは自然の中に多くいて、友達のいない僕のことをずっと見守ってくれていた。そんな存在なんです」――と。
――だから、裏切ることはできなかった。
テーニャは話し終えて、少し難しそうな顔をする。
その理由は分かった。ボクにいまの話が、伝わっているのか不安なのだ。
この世界には、人ならざる生命が多く存在していると云われていた。
魔物や魔族――そして、今回の話に出てきた『妖精』という存在。
「不思議に思われるかもですけど、本当のことなんです」
テーニャは、そう念押しするように言った。
ボクからしたら、半信半疑の話。少年に嘘をつくメリットはないのだけど、同時に見えない存在を信じることは難しかった。
でも彼の瞳は、とても嘘をついているようには思えない。
だから、ボクは小さく頷いた。
「信じるよ。いや、信じたい、かな……?」
するとテーニャは、ボクの言葉を受けて笑う。
「ライルさん、真っすぐな方なんですね」
「え、そうなのかな……?」
「そうですよ」
どこをどう取って、彼がそう考えたのか。
ボクにはさっぱり分からなかったが、ひとまず置いておこう。そう思って、ボクは意を決して本題に入ることにした。テーニャも、それを察したらしい。
小さく息をついて、こう訊いてきた。
「それで、お話というのは……?」
「うん。実は、あの髪飾りのことなんだ」
「……………」
ボクが答えると、少年はゆっくりと呼吸をする。
どうやら、ある程度の予想はついていた様子だった。小川を流れる水を見つめながら、彼は静かにこう語り始める。
「僕みたいな貧乏人が持つには、高価すぎる……ってことですよね? そう思われるのは、覚悟していたので。ライルさんには、正直にお話します」
どこか緊張した面持ちで。
「先日のことです。僕は出会ったんです」
そして、微かに笑みを浮かべながら。
「僕以外に妖精の姿が見える、不思議な女の子に」――と。
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