後編
――アーシャが、リュカを身籠った頃のこと。
妻はドレスを取り出して、物思いに耽っていたのを憶えている。ボクがどうしたのか、と声をかけると、彼女は目を細めてこう言ったのだ。
『いまなら、お母様の言葉の意味が分かる気がします』
あいにくだけど、ボクはその内容は知らない。
それでも、アーシャにとってその言葉は大切なものに違いないのだった。まさしく母から子へと繋ぐような、なにか。
「だったら、ボクはそれを繋ぐだけだ」
修繕師の役割は、想いを繋ぐこと。
ボクはドレスを前にして、ひとつ呼吸を整えた。
――そして、数日後。
ボクはアーシャと共に、リュカを待っていた。
「少し、緊張しますね」
「……ははは、そうだね。ボクも、手が震えているよ」
自分の仕事には、自信がある。
それでも今日の修繕に込めた意味合いは、また少し異なっている。ボクはこれまで修繕師として積んできた経験を思い返した。
そして、紡いできた物語を。
「お父様、お母様……!!」
そうしていると、部屋の扉が開いた。
そこに立っていたのは、ボクたちの最愛の娘であるリュカ。明るい笑顔を浮かべている彼女には、どこかアーシャの面影があって……。
「あぁ、リュカ……」
アーシャはゆっくりと娘に歩み寄り、微笑んでこう言うのだった。
「綺麗ね……」――と。
その言葉に、ボクは一つの光景を思い出す。
アーシャの母であるミランダさんが、最期に遺した娘への言葉。
「――あぁ、そうだね」
多く語る必要はない。
ただ『いま目の前にいる母と娘の姿がその証明になる』と、そう思うのだった。
以上、久しぶりの修繕師更新でした。
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