8.新しい思い出の日々。
ここまで第1章。
明日から第2章です。応援よろしくです!
――アーシャの依頼を終えて、数日が経過した。
「ふぅ、今日も頑張ろう……!」
店の立て看板を出して、ボクはそう口にする。
空を見上げると、そこには雲一つない蒼が広がっていた。清々しい気持ちになるそれに、ボクは思いっきり深呼吸。
そして、店の中に入ろうとした。
その時だ。
「お久しぶり、です」
「……アーシャ?」
あの少女が、一人でボクの前に姿を現したのは。
◆
「先日は、失礼な態度を取って申し訳ございませんでした。母のドレスを修繕していただいたこと、心から感謝いたしております」
「え、あぁ。いいよ、気にしてないから」
店内に招き入れ、互いに椅子に腰かけるとすぐ。
アーシャは深々と頭を下げてそう言った。だけどボクは、リンドさんから事情を聴いている。その話をするわけにもいかない、と思い頬を掻くしかなかった。
しかし、彼女の方は気が済まないらしい。
面を上げると、おもむろに一通の手紙をテーブルに置いた。
「これ、は……?」
「わたくしのお母様が、大切に仕舞っていたものの一つです。どうやらそれは、貴方に渡した方が良いような気がしましたので」
「…………?」
そして、そんなことを言う。
ボクは首を傾げながら、その手紙を手に取って開いた。
するとそこには、ある意味で納得の内容がある。
「あぁ、やっぱり……」
ミランダさんから、とある修繕師に宛てた手紙。
その修繕師の名はローンド・ディスガイズ――ボクの祖父だった。どうやら彼が亡くなった際、葬儀に行けなかったことを謝罪しているらしい。
それと同時に、生前の感謝がたくさん述べられていた。
「わたくしとお母様は、貴方たちに支えられていたのですね」
「…………」
こちらが手紙を読み終えると、アーシャがそう口にする。
ボクは大切に贈り物を仕舞いながら、こう伝えた。
「ボクたちは、ただ守りたかっただけなんだ」――と。
大切な思い出を。
そして、それに想いを馳せる人々の心を。
「ありがとう、ございます……!」
「わっ!? な、泣かないでよアーシャ!?」
「な、泣いてなどいません! 少しだけ、目にゴミが入って……!」
ハンカチを取り出し、涙を拭った少女。
一つ息をついてから彼女は、どこか晴れやかな表情を浮かべて言った。
「……えぇ、きっと。わたくしも、同じだったんですね」
その言葉に、ボクは自然と笑みを浮かべる。
「うん、そうだね」
こちらが頷くと、彼女も笑った。
こうして一つの依頼が終わる。
そしてまた、新しい思い出の日々が始まるのだった……。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより★★★★★で評価など。
創作の励みとなります。
応援よろしくお願いします!
<(_ _)>




