6.終わり際の希望。
短めです。
――ミランダの容態が急変したのは、明け方のこと。
アーシャは大急ぎで、長い廊下を駆けた。
そして母のいる部屋へと飛び込むと、そこには父と兄たちの姿。どうやらまだ、最悪の事態には至っていない様子だった。
それでも、ことは一刻を争う。
急遽呼ばれたのであろう治癒術師や医師は、みな大声を発しながら奔走していた。だがしかし、一向にミランダの様子は変わらない。
「お母様……!」
アーシャが声をかけても、反応はなかった。
だが、途切れ途切れに呼吸はしている。もっとも、苦しげなそれではあった。周囲の家族たちは、全員が終わりを覚悟している。
少女は子供ながらも、その空気を察した。
でも、まだ駄目なのだ。
「もう、楽にして差し上げましょう。……お父様」
「え……?」
そう考えていた。
しかし、一番上の兄がそう口を開く。
すると父親を含めた多くの者たちの顔に、諦念が浮かんだ。
「あぁ、そうだな……。これ以上は、延命してもミランダを苦しめるだけだ」
「そんな、駄目です! お父様!!」
そんな流れの中、父が重い口を開いてそう言った。
悲しみに満ちたそれだが、ただ一人――アーシャだけは、納得できないと声を上げる。まだなのだ、と。涙ながらに、父に縋りついた。
彼女のすすり泣く声が響く部屋。
そして、いよいよアーシャも諦めかけた。その時だ。
「アーシャ様、おられますか……!?」
聞き覚えのある声が、開いたままのドアの方からしたのは。
その場にいた全員がそちらを見る。すると、
「リンド……?」
そこにあったのは、大きく肩で息をするリンドの姿。
そんな彼の手には――。
「それ、は……?」
「良かった。まだ、間に合ったのですね……」
一つの袋があった。
間違いない。それは、ライルに依頼していた――。
「アーシャ様、時間がありません。今すぐに――」
リンドは少女に歩み寄り、その袋からドレスを出して告げた。
「こちらに、御着替えください」――と。
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