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今日の朝一は、薬学の勉強の時間。
「薬草の中には薬の材料となるもの、火薬として使われるものがある。それを知り活用する事で君達の活動幅は飛躍的にはね上がるだろう。この薬学の時間では順を追って各人のレベルに合わせた指導をしていくので上を目指すものは頑張ると良い」
一年生では全ての授業を担任が受け持つらしい。
「初回は、基本的な回復薬の作り方からになる。ページを開き素材を確認したら中庭に出て該当の、植物を採集してきたまえ」
ドアを抜けると中庭に出る。
簡単に言うとこの中から該当の薬草をとってきて回復薬を作ってみよう! という単純な授業。
「中庭気持ちいいねー」
中庭を眺めていたら一人の男子生徒が駆け寄ってくる。
「そこの女生徒よ、この薬草は何処いずこか存じませんか?」
男子生徒が教科書を指差し質問してくる。
「えーと。さっき右でそのページを開いた人が群れていましたよ? でもあっちはダミーで左が当りとみましたが?」
「かたじけない!」
男子生徒は左の奥の方に走っていった。
「むむ、我々は中央を行くぞ!」
「はい! 殿下!」
「慌ただしいなぁ……」
アリス達の話をさりげなく立ち聞きしていた生徒は、複数人を引き連れて走り去る。
教科書を携えた一年生が次々に散っていく。
「でも、一番にできた者と良くできた者に褒美で校内で使える商品券又は評価+1を出してくれるというのは美味しいね♪ アリア」
「そうだね、お姉ちゃん」
「あ、これシロツメクサしかも四つ葉だ! ラッキー♪」
「お姉ちゃん真面目にやらなきゃダメだよ?」
「あ、そっか商品券貰えるんだったよね? 僕もちょっと頑張るよ」
「ぎゃーーー!」
「ん? どこかで複数人の絶叫が聞こえた? マンドレイク、別名マンドラゴラでも誰か引き抜いたのかな? って素で思ってしまう僕ってなんてゲーム脳! にゃは♪」
採集が終わると、丁寧にレシピの材料が記載されたページをめくるとその通りの薬草を用意する。丁寧に、片時も目を離さないでいると、アリスの鍋は輝きを放ち、回復薬を作り上げる。調べるとランクSと出た。
ぴろん、りん♪
「これってチート?」
手抜きはしていないが初めてで大成功で更にコツまでつかんだらしい。これからはずっとAランクかSランクの回復薬が作れるという。
「……まあまあ、お得?」
「一番早くに作り上げた勝者はサーバリオン王太子殿下です」
「おめでとうございます」
イケメンの王太子が当然の結果であると言わんばかりに自慢げに椅子から立ち上がる。そして当たり前の様に複数人の皆さんが拍手して盛り上げる。
「皆も精進するがよい」
複数人の皆さんが集めてきたモノを適当に茹でただけなんだけどまあ、最初はそんなもんだと気にせず教科書をめくっていく。
「そして、クラスで一番の品質の回復薬はアリス嬢の作成したものであった。各人、王太子殿下の言われた様に精進努力するように」
「商品券ゲット! いぇい♪」
アリスは机の下で小さくガッツポーズして喜びを噛み締めていた。